猫を飼っていて注意したいのは、猫にとって危険な食品を知らずに食べさせてしまうことです。
人間には害がなくても猫が食べると中毒症状を起こしたり、病気につながったり、時には死に至ることもあるので十分な注意が必要です。
ネギ類やぶどう、チョコレートなどは、猫に食べさせてはいけない食品としてよく知られていますが、猫のご飯を手作りしている方は、危険な食品をうっかり混ぜてしまわないよう、細心の注意をはらってください。
野菜類
●玉ねぎ・長ねぎ・わけぎ
玉ねぎや長ねぎ、わけぎなどのネギ類に含まれる「有機チオ硫酸化合物」が、猫の赤血球に影響を及ぼして破壊するため、「溶血性貧血」になり、下痢や嘔吐、発熱、食欲不振、血尿、けいれん、呼吸困難、黄疸などの症状を引き起こし、時には死に至ることもあります。
この玉ねぎの毒性は、生はもちろん、調理加熱しても乾燥加工してもなくならないので注意が必要です。特に、ハンバーグやコロッケ、シチュー、すき焼き、パスタ、グラタンなど、玉ねぎが入っているものをうっかり食べさせてしまわないよう、十分に注意してください。
●にら・らっきょう
ネギ類と同じく、赤血球が破壊され「溶血性貧血」の原因になります。
下痢や嘔吐、食欲不振、血尿、胃腸障害、アレルギーなどの症状を引き起こし、重度の場合は死に至ることもあります。
●ニンニク
よく肉料理などに使われるニンニクは、ごく少量であれば問題ありませんが、ネギ科の植物に含まれる「有機チオ硫酸化合物」が赤血球を破壊するため「溶血性貧血」を起こすことがあります。
特に子猫や高齢の猫は、下痢、嘔吐、発熱などの症状が出やすいので、少量でも与えないほうが無難です。
●ほうれん草
生のほうれん草には、カルシウムの吸収を阻害するシュウ酸が含まれているため、「尿路結石」の原因となります。
ゆでて水にさらしてから与えると、シュウ酸を減らすことができます。
●タケノコ
タケノコには、中毒を起こす成分は含まれていませんが、猫が大量に食べると消化がしにくいため下痢を起こすことがあります。また、アクと呼ばれる「シュウ酸」は「尿路結石」の原因になることがあるので、常食させるのはやめましょう。
●ピーマン
ピーマンは、少量なら加熱して猫に与えても問題ありません。
ただし、ピーマンには「ソラニン」という成分が含まれているため、摂取量によっては嘔吐や下痢などを引き起こすことがあるので注意が必要です。
●アスパラガス
加熱したアスパラガスを猫に与えても問題ありませんが、生の場合は葉の部分に「アルカロイド」という中毒物質が含まれているため、少量でも嘔吐やけいれんなどの中毒症状があらわれることがあります。
果物類
●ぶどう・レーズン
猫にとっても、犬にとっても、最も危険な果物がぶどうやそれを乾燥させたレーズンです。
原因はよくわかっていませんが、猫がぶどうを食べると中毒により「急性腎不全」を引き起こす可能性があり、最悪の場合死亡することもあります。
レーズンの入ったパンや菓子、ワインやぶどうジュースなども危険なので、十分に注意してください。
●アボカド
アボカドの果肉や皮に含まれている「ペルジン」という成分が、中毒症状を起こすと言われています。
ペルジンには、抗菌・抗細菌作用がありますが、猫が食べると胃腸を刺激して嘔吐や下痢を引き起こし、最悪の場合は死に至ることもあります。
●いちじく
生のいちじくには、「フィシン」というタンパク質分解酵素が含まれているため、猫が食べると口の中の粘膜を傷つけ、炎症を起こしたり、よだれが出たり、嘔吐や下痢を起こすことがあります。
また、「フラノクマリン」という有機化合物が含まれ、食べたり触れたりするだけでも皮膚の炎症を引き起こすことがあります。
●パパイヤ
パパイヤに含まれる「パパイン」という酵素は、猫がアレルギーを起こす原因になることがあります。パパイヤによるアレルギーを起こすと、口の中が荒れて炎症を起こし、重度になると呼吸困難になる可能性があります。
特に完熟する前の緑色のパパイヤには、パパインが多く含まれているので、注意が必要です。
●みかん・グレープフルーツ・レモン
みかん・グレープフルーツ・レモンなど、柑橘系の果物には、「リモネン」「ソラレン」という成分が多く含まれており、猫が食べてしまうと、下痢や嘔吐、手足の震え、皮膚の炎症などが起きる可能性があります。
肉類
●生の豚肉
生の豚肉には、腸管出血性大腸菌やE型肝炎ウイルス、トキソプラズマなどの寄生虫が付着していたり、サルモネラ属菌やカンピロバクターといった食中毒菌が付いていることがあります。
特にトキソプラズマに感染すると、下痢や食欲不振、嘔吐や発熱などの症状のほか、体重減少が見られます。
●生の鶏肉
生の鶏肉には、大腸菌やサルモネラ菌が付着していたり、寄生虫感染の危険性があります。
加熱した鶏肉は、アレルギーや腎臓疾患などがある猫以外は、食べても問題ありません。
●鶏のから揚げ・焼き鳥・つくね
鶏のから揚げや焼き鳥は、複数の調味料や香辛料が使われるため、猫の健康に影響を与えることがあります。
また、焼き鳥にはネギが一緒に串に刺さっていたり、つくねには玉ねぎが入っていることがあります。ネギや玉ねぎは猫にとって非常に危険な野菜なので、十分に注意してください。
●レバー
レバーは、少量であれば猫が食べても問題ありませんが、与えすぎると「ビタミンA過剰症」になることがあります。
ビタミンA過剰症は嘔吐や下痢、骨の変形などを引き起こす可能性があるため、注意してください。
また、生のレバーには寄生虫が付いていたり、大腸菌やカンピロバクターなどの食中毒菌に感染することがあるので、避けてください。
魚介類・海藻類
●青魚
アジ、サバ、サンマ、イワシなどの青魚には、「不飽和脂肪酸」が豊富に含まれているため、猫が食べ過ぎないように注意する必要があります。
不飽和脂肪酸は分解されるときにビタミンEを大量に消費するので、食べすぎるとビタミンEが不足して下腹部のしこりや食欲不振、ふらつき、発熱などの症状が見られる「イエローファット(黄色脂肪症)」になる恐れがあるからです。
また、生の青魚には、分解酵素「チアミナーゼ」が含まれていて、猫が「ビタミンB1欠乏症」を起こす可能性があります。内臓に寄生する「アニサキス」などの寄生虫が付着していることもあるので注意してください。
●ツナ缶
ツナ缶の原料であるマグロやカツオには、青魚と同じく「不飽和脂肪酸」が豊富に含まれています。
不飽和脂肪酸を猫が過剰に摂取してしまうと、下腹部に黄色い脂肪の塊(しこり)ができる「イエローファット(黄色脂肪症)」になる危険性があります。
●貝類
アワビ、 サザエ、トコブシなどの内蔵には光線過敏症の原因となる成分があり、これらの貝を食べた後に日光に当たると、毛の薄い部分の皮膚が荒れて腫れやかゆみの症状が出たり、毛が抜けたりします。
特に目の周りや耳に症状が現れやすく、重症化すると耳が壊死する危険性もあります。加熱、非加熱を問わず貝類を猫に与えるのは避けましょう。
●イカ・タコ・スルメ
イカ・タコ・スルメは消化が悪い食品なので、猫が食べると嘔吐や下痢を起こすことがあります。
また、イカ・タコ・スルメには、ビタミンB1を破壊する働きがある「チアミナーゼ」という成分が含まれているため、「ビタミンB1欠乏症」になる可能性があります。
ビタミンB1欠乏症になると、よだれが多くなったり、ふらついて歩行障害を引き起こすことがあります。
●魚の骨
尖っている魚の骨や鶏の骨は、人間と同じように猫の場合も喉や消化器官内に刺さりやすくなっているため危険です。
骨を食べた後、猫がよだれをたらしていたり、口臭がしたり、食欲がない場合は骨が刺さっている可能性があります。
加工食品・調理品
●ハンバーグ
人間が食べるために作られたハンバーグには、猫が中毒症状を起こす危険性が高い玉ねぎが入っています。
玉ねぎに含まれる「有機チオ硫酸化合物」が、赤血球を破壊して貧血を引き起こすほか、嘔吐・下痢・黄疸・肝臓肥大の症状が出たり、最悪の場合は死に至ることもあります。
●菓子パン・惣菜パン
ジャムやクリームが入っている菓子パンは、糖分が多くカロリーも高いため、猫の健康にはよくありません。
特に、チョコレートやココアが入っているもの、レーズンが入っているものは、中毒症状を起こす可能性があるため、危険です。
また、惣菜パンの中には猫にとっては有害な玉ねぎが入っているものもあるため、食べさせないようにしましょう。
●カレー
カレーには、猫にとって危険な玉ねぎが入っていることが多いため、与えないようにしてください。
また、カレーは数種類のスパイスで味付けされていますが、猫には刺激が強すぎるため、下痢や嘔吐を引き起こすことがあります。
菓子・スイーツ
●チョコレートやココアが入ったもの
チョコレートやココアには、「テオブロミン」という成分が含まれていますが、人間には無害でも猫にとっては中毒性があり、嘔吐や震え、けいれん、発熱、不整脈、心不全などを招き、最悪の場合死に至ることもあります。
●キシリトール入り菓子
キシリトールは甘味料としてお菓子やガムなどに使われていますが、猫にとっては危険な成分です。
猫がキシリトール入りのお菓子などを食べると、体内のブドウ糖の濃度が急激に下がってしまい、ふらつきやけいれん、歩行困難などを起こす低血糖の症状が現れたり、急性肝不全を発症することがあります。
●アイスクリーム
アイスクリームを猫に与えると、糖分が多いため人間と同じよう肥満を招いたり、乳糖不耐症(乳糖を分解できない体質)により下痢をしたり、嘔吐をすることがあります。
また、チョコレートやレーズン、マカダミアナッツなどが入っているアイスクリームは、中毒症状を起こすことがあるので、注意が必要です。
飲み物
●アルコール類
猫の肝臓はアルコールを分解することができないため、ビール、日本酒、焼酎、ワイン、ウィスキー、甘酒などのアルコール類を与えると、嘔吐、下痢、ふるえ、意識障害などの症状を起こすことがあり、最悪の場合は、急性アルコール中毒で死に至ることもあります。
アルコールが含まれるお菓子や料理を食べてしまった場合や、こぼしたアルコール飲料やコップに残ったものを猫が舐めてしまった場合も要注意です。
●コーヒー
コーヒーに含まれているカフェインには、中枢神経を刺激し興奮させる働きがあります。
猫が過剰にカフェインを摂取すると、めまい、震え、下痢、吐き気、痙攣、筋肉硬直、心拍数の増加、呼吸不全などの症状があらわれ、最悪の場合は死に至ります。コーヒーゼリーなどにも注意が必要です。
●ココア
ココアには、チョコレートと同じく「テオブロミン」という成分が含まれているほか、カフェインも含まれています。
そのため、猫がココアを摂取してしまうと嘔吐や震え、けいれん、発熱、不整脈、心不全などを招き、最悪の場合死に至ることもあります。
●紅茶・緑茶・ウーロン茶・ほうじ茶
コーヒーほど含有量は多くありませんが、お茶にはカフェインが含まれているので、中毒を起こすとめまい、震え、下痢、吐き気、痙攣、筋肉硬直、心拍数の増加、呼吸不全などの症状があらわれ、危険な状態になります。
ティーバッグを食べてしまうこともあるので、注意してください。
●野菜ジュース・フルーツジュース
市販の野菜ジュースやフルーツジュースには、糖分や塩分、その他の添加物が含まれていることがあり、猫の健康にはよくありません。
また、玉ねぎが入っている野菜ジュースやぶどうの入っているフルーツジュースは、中毒を起こすことがあるため特に危険です。
●ミネラルウォーター
猫は、ミネラル分を上手に分解できないため、マグネシウムやカルシウムの含有量が多い「硬水」と呼ばれるミネラルウォーターを与えると、尿管や膀胱に石ができる「尿結石」を引き起こすことがあります。
その他
●生卵
生卵は、サルモネラ菌感染の危険があるほか、白身に含まれる「アビシン」という酵素が、猫の必須ビタミン「ビオチン」を分解する働きがあるため、下痢や皮膚炎、結膜炎などの症状を起こすことがあります。
●ナッツ類(アーモンド・くるみ・ピーナッツ・アカデミアナッツなど)
ナッツ類には大量の油脂が含まれているため、嘔吐、下痢、胃の不調、高熱などの症状が出ることがあります。
また、ナッツ類は脂肪分が多く高カロリーのため、猫が過剰に摂取すると肥満につながります。
●調味料
トマトケチャップ、ソース、サラダドレッシングには、塩分や糖分、食品添加物が含まれているほか、猫には中毒性のある玉ねぎが入っていることがあるので危険です。
●香辛料
コショウ、わさび、唐辛子などの香辛料を猫が食べると、胃腸を刺激して下痢や嘔吐を引き起こすほか、肝臓や腎臓に悪影響を及ぼす可能性があります。
●医薬品・ 栄養補助食品・ サプリメント
人間用の医薬品、栄養補助食品、サプリメントを猫が誤って口に入れてしまった場合、予想外のさまざまな症状を引き起こし、時には死に至ることもあります。
特に鎮痛剤、風邪薬、胃腸薬、ステロイド剤などは要注意です。
●観葉植物・園芸植物
身近にある観葉植物や園芸植物の中にも、猫が食べてしまうと危険なものがあります。
ポトスやアイビー、ドラセナ、アロエ、ベンジャミンなどの観葉植物には十分に注意してください。また、ユリやスイセン、すずらん、ポインセチア、シクラメン、ツツジ、スイートピーなども猫にとっては危険な植物です。